UberやLyftのドライバーはギグワーカーか社員か
海外というかアメリカではギグワーカーの取り扱いについて訴訟になっていたりします。UberやLyftのドライバーとして働いている人達がコントラクター、要は個人事業主、つまりギグワーカーなのか、それともemployee、つまり社員なのか、ということについて行政とUberやLyftといった民間会社が争っているということです。
冒頭のまとめ部分です。
Massachusetts has filed a lawsuit against Uber and Lyft accusing the companies of misclassifying drivers as contractors and denying them benefits and workplace protections.
マサチューセッツ州はUberとLyftに対して訴訟を起こした。内容としては、両社がドライバーをコントラクターと誤認識しており、彼らの利益と保護を否定しているというものだ。
"Uber and Lyft have built their billion-dollar businesses while denying their drivers basic employee protections and benefits for years," Attorney General Maura Healey said in a press release.
「UberとLyftは何十億というビジネスを築きながら、ドライバーの基礎的な保護と利益を何年案も否定してきた。」と司法長官のMaura Healeyはプレスリリースで述べている。
The companies argue that reclassifying drivers as employees would put many of them out of work and reduce their flexibility.
これに対しての両社の主張は、ドライバーを社員と位置づけ直すと、多くの人達は仕事を失い、柔軟性がなくなってしまうことになるというもの。
California also sued Uber and Lyft earlier this year, and the two lawsuits could have massive implications for the ride-hailing giants' business models.
カルフォルニア州も今年の初めにUberとLyftに対して訴訟を起こした。そしてこれらの2つの訴訟はライドハイリングの大手2社のビジネスモデルに大きな影響を与えうるものとなっている。
世界各国、州で見解分かれる?
UberとLyftのドライバーが社員なのか、個人事業主なのかとうことについては結構前からいろんな争いが起きていて、見解も分かれてます。
UberとLyftの主張
事業者側の主張です。
ウーバーやリフト側は、自分自身が所有する車で営業していること、就業時間を自分で決めていること、競合他社でも仕事ができることを理由に、ドライバーは従業員ではないと主張している。
日本ではウーバーの事業展開は限定的で、Ubereatsではない元々のUberに至ってはかなり縮小した事業展開で、単なる配車アプリなんて取られ方をしてるかもしれませんが、元々ウーバーは誰もがタクシー運転手になれる、つまり自家用車を使ってタクシービジネスができるようにしてくれるアプリだったのです。なので、ウーバーやリフトは上記のような主張をしているわけですね。
ポイントは自家用車もしくは法人化した人であってもとにかく自分自身が所有している車で営業をしているということと、就業時間を自分で決めていることでしょう。つまり働きたければ働くし、働きたくなければ働かない。誰の指示を受けることもなく仕事ができるということを根拠にドライバーは従業員ではなく個人事業主だ、とい言っているのです。
労働者側の主張
一方で労働側からの主張です。この記事は主にUbereatsの事例を扱っていますが、先ほど述べたように日本では本家Uberはほぼ稼働していないのでUbereatsのお話になっているだけであって、仕組みとしては同じと言えます。
UberEatsの配達員は「誰でもできる(市場における希少性が極めて低い)仕事」です。誰でもできる仕事は、すなわち誰でも参入可能で、コモディティ化しやすいという特徴があります。市場原理として、価値(対価)が低下するという危険に晒されることになります。
そこでこういった危険を回避するため、専門性がそこまで高くない人々は、一般的には賃金・労働環境に関し雇用者への交渉余地のある従業員として働き、労働組合に加入することで、法的な面を含めて自身の生活の安全を守るわけです。
完全にしっくりと来る内容ではないのではありますが、専門性が高くない仕事であり多くの人が参入可能で賃金が低下する危険性から身を守るために、従業員として働き労働組合に入ることで生活の安全を守る、という主張のようです。そもそもそういった参入障壁が低い業務だという認識は働く側にもあったのではとも思えますが、そこはどうなんでしょう。
一方同記事にあるように業務遂行上の怪我に対する補償制度はあるようです。
今後も動向に注目です。
ギグワーカーの仕事
日本でも広がり始めたギグワーカー
UberやAirbnbというとどうしても海外のことと思いがちです。実際UberにしろAirbnbにしろ日本だと海外、特にアメリカほどの広がりは出ていません。しかし日本にもギグワーカーは増えてきているのです。その典型例がUbereatsです。本家Uberは法律によって抑制されている感はありますが、Ubereatsの方は都内なんかはもう事故を起こしそうな勢いでいろいろなところで見かけます。
大きなバッグを背負っている人を見たら8割9割Ubereatsの配達員ですよね。
配達員は社員ではない
しかしながらあのUbereatsの配達員はUbereatsの社員ではありません。彼らはアプリに登録し、アプリ上で案件を獲得した上で配達の仕事をしています。いつも仕事があるわけではなく、収入は一定ではありません。Ubereatsに大量の注文が来れば収入が上がる可能性がありますが、そうでなければ上がりません。また、Ubereatsに大量の注文があっても、配達員がたくさんいたりすると仕事を受注できるかは不明です。
そして何よりもUbereatsの配達員は誰でもできます。登録さえすればいいのです。こういった形態で働いているのがギグワーカーです。恐らく皆さんの周りにもギグワーカーとしてUbereatsの配達員をやっている人がいるかもしれません。
先日はこんなニュースもありました。
ロンドンオリンピックフェンシング銀メダリストの三宅諒さん。Ubereatsの配達員始めたんです。こんな感じで誰でもいつでも始められるのがギグワーカーです。もちろん辞めるのも自由です。
恐らくUbereatsの配達員を経験した人よりUbereatsで配達を頼んだ人の方が数としては多いでしょうね。こんな仕組みが裏側にあったんですね。
Ubereatsの仕事にまつわるトラブル
何だか新しい働き方で、いいことが多いような気がするギグワーカーですが、Ubereatsではトラブルも発生しています。
配達された食べ物が食べれる状態ではなかったため、受取りを拒否したのです(料金は返金された模様)。しかし受取りを拒否された食べ物がそこら辺に捨てられており、それについてUbereatsにクレームをしたところ、配達員は社員ではなく個人事業主、つまりギグワーカーだから何もできない、という回答だったということです。
日本だと最近キッズラインというこれまたギグワーカーなのですが、ベビーシッターのマッチングプラットフォームが話題になっていますね。
キッズラインに登録しているベビーシッターが逮捕されたにも関わらず、キッズラインとしては彼らは社員ではなくギグワーカーなので、というスタンスでの対応をしており、利用者を中心にかなり怒り心頭となっているようなのです。
ギグワーカーが仕事を獲得しているUbereatsやキッズラインはいわゆるC2Cと呼ばれるビジネスモデルです。C2Cというのは顧客同士が直接取引を行う形式です。Ubereatsやキッズラインはあくまでそのための環境、仕組みを提供しているという立場。だからそこで起こったトラブルだったり、保障といったものは従来のサービスと異なる・・・ということですね。
理論上や規約上はそういう形になるのでしょうけど、実際それでサービスとして受け入れられるのかというのは今後議論になりそうです。Uberはアメリカでは上場していますし、キッズラインも今後上場を目指すと言われています。
今後の動向に注目していきたいですね。
ギグワーカーとは何か
ギグワーカーとは何か
最近ギグワーカーという単語を聞いたことがないでしょうか。もしくはギグエコノミー。どちらも「ギグ」という単語と「ワーカー」「エコノミー」が組み合わされた単語です。
ということは「ギグ」という単語が何かを知る必要があります。「ギグ」とは元々は音楽用語です。即興でライブハウスなどで軽い合奏をすることをギグと呼びました。そこから軽く、単発で仕事をすることをギグワーカー、そして単発の仕事によって成り立つ経済のことをギグエコノミーと呼ぶようになったのです。
最近は単発バイトのプラットフォームなどもありますね。
ギグワーカーとフリーランスの違い
似たような労働形態にフリーランスというものもありますが、ギグワーカーとはどう違うのでしょうか。ギグワーカーは単発でネットを介して仕事を受注します。ネット経由で単発というところが特徴的と言えば特徴的で、フリーランスかつギグワーカーである人もいます。フリーランスは別にネット経由でも経由でなくてもOKで、単純に組織に属さないで仕事を請け負っている人のことですね。
ギグワーカー誕生の経緯
どうしてギグワーカーという働き方が誕生したのでしょうか。それはネットサービスの発展と関係があります。アメリカでUberやAirbnbといったプラットフォーム型ビジネスが登場することでギグワーカーは誕生しました。UberやAirbnbは自社では労働者を雇用しません(ここら辺は実はいろいろと論争や訴訟になっていますが)。その変わりUberやAirbnbを使っている人達がプラットフォームを使って仕事を取ることができる仕組みを提供しています。そしてその仕事というのは、単発なのです。Uberであればある地点からある地点まで顧客を運ぶという単発の仕事。Airbnbであれば旅行客を(元々は)自宅の一室に泊めるという単発の仕事です。
継続的に同じお客さんが来たりするわけではなく、さらに言うと当初はUberの運転手、Airbnbのホスト達も継続的に仕事をする人ではない想定だった可能性もあります。だから単発仕事なんですね。
当初は副業的な意味合いも強かったように思わえるギグワーカーですが、それなりに売上げ上がるということがわかると、どんどん参入者が増え、今ではギグワーカ専業という人達もたくさんいますね。
ギグワーカーは社員ではない?
ギグワーカーが副業だったらある意味よかったのかもしれませんが、専業となった結果、そして景気が悪くなり、特に最近のコロナのような現象、つまり不景気が起きた時に問題が発生してしまっています。具体的には失業保険問題です。企業が雇用をしていれば失業保険やそれに類するものが受け取れるのですが、そうでない人は受け取れません。だって失業してないから。
しかしアメリカではそのことに対してギグワーカーが大きな声を挙げており、法律が変わりつつもあるようです。日本ではまだギグワーカーは副業的な意味合いが強そうな感じもしますが、いずれ同じ現象が起きるかもしれませんね。